モーリス・ルイス展

川村記念美術館で開催中の、モーリス・ルイス展を見に行きました。

モーリス・ルイスは、20世紀半ばのワシントンD.C.で、
色鮮やかな抽象絵画作品を数多く残したアメリカ人画家。

当時、新たに開発されたアクリル絵具(多くの画家の間では薄すぎると不評だった)を
さらに薄く希釈し、それをキャンバスの上に流して色層をつくるという
独自の手法で制作した、スケールの大きな抽象作品を残しています。


面白いのは、ハウスハズバンドだったルイスは自宅の小さなアトリエで制作する際、
独り閉じこもって誰も(奥さんさえ)部屋に招き入れなかったそうで、
その制作技法の詳細が未だ明らかになっていないということ。

また彼は、同時代の画家が活躍していたニューヨークから距離を置いて
ワシントンD.C.で独自のスタイルを模索し、生前は無名に等しい状態だったそう。

49歳の若さでこの世を去った時、600点もの作品のほとんどは未公開で、
ロール状に巻かれたままだったということです。

そんな、一見内向的に見えるルイス、
残した作品の潔い色面には揺るぎない確信のようなものも感じつつ、
それをより多くの人の前で発表しなかったのは何故だろうかと、
思いめぐらされる展示でした。


代表作のうち、全ての色が混じり合い混沌の世界を思わせる初期(ヴェール)から、
各色が分かれて余白が生まれていき(アンファールド)、
晩年にはストライプという秩序だった世界を描いたその変遷も面白かった。


余白のある作品の鮮やかな色彩もきれいですが、
全ての色が混じり合ったヴェールは、作家の内面の何かを表しているようにも見えたり、
混沌の中に全ての終わりと始まりが蠢いているようにも見えたりして、
色々感じさせられました。


11月末までだそうなので、関東近郊の方はご興味あればぜひ。
作品が大きいので、実物の迫力はすごいです。
→川村記念美術館 『モーリス・ルイス 秘密の色層』