2006年01月25日
Your Light Shadow
photo: Olafur Eliasson "Beauty"
デンマーク生まれ、アイスランド人の現代美術作家、オラファー・エリアソン。
(実際により近い発音はオーラブル・エリアソンとのこと)
原美術館でやっている、日本初という彼の個展を見てきました。
エリアソンは、光、水、風、温度といった自然現象を、人々が体験できるような
インスタレーションとして展開する作家とのこと。
雑誌やポスターなどを見て、良さそうだと期待していったのですが、
実際にその空間に足を踏み入れると、そんな予想を軽く上回る、息を呑むような感動がありました。
たとえば、天井からつるされた、表面が鏡になっている輪。
モーターによってゆっくりと回転するその輪にスポットライトが当たる、一見シンプルな装置。
しかし、その装置によって反射した光が白い壁と天井にゆっくりと描き出す光と影、
そしてその変化は、どんな映像よりも美しいと思えるようなものだったのです。
ミニマルでありながらいつまで見ていても飽きないその作品の名は、"Your Space Embracer (空間を包み込むもの)"。
あるいは、真っ暗な部屋の天井から霧状になって散布される水。
そこにライトが当たり、現れた虹が微妙な空気の流れによって揺らぐ作品、"Beauty"。
壁一面がオレンジ色の面光源で、すべてのものがセピア色をした単色の世界になる部屋。
部屋の入り口にはファンが取り付けられて風が流れる、"Room for One Colour and Windy Corner"……
とにかく、彼の作品の数々はどれもコンセプトがシンプル。
でも、そのシンプルさゆえに際だつ美しさには、尋常ではない力強さがありました。
ライトやモーターなど、人工的な装置から生み出される、美しい自然現象。
それを体験するということによって、すべての出来事は自然の中での出来事という、
当たり前で忘れがちな事実を、知らず知らず考えている自分がいたり。
どの作品も本当に素晴らしいのですが、個人的には特に、
空間全体に光と影が描き出されるような"Embracer"シリーズに目を奪われました。
ここで織りなされる光と影の動きに音を乗せたらどんなだろう、などと思ってみたり。
作品の意味が分からないと面白くない現代美術は多いですが、
彼の作品は、コンセプチュアルでありながらも、まずはとにかく、衝撃を受けるほど美しいです。
ここ最近行った展覧会で、一番良かったかもしれません。
……というわけで、思わずオススメしたくなってしまったので、
東京近郊にお住まいで、もし少しでも興味を持たれたら、ぜひ見に行ってみてください。
そこに行って"体験"する光には、作品を写した写真などからは得られない感動があったので。
品川の原美術館にて、3/5までの開催のようです。