こころからありがとうを言えるかどうか

euphoria、4枚目となるフルアルバム、
"fluidify"、2010年2月5日にリリースします。

CDよりも高音質である、24bit48khzという形式で、
アルバム全曲を、全世界同時に、無料配信します。

今回のリリース形態について、
そのアイディアが出てきたのが、2008年の秋頃、
それから、さまざまな角度から、繰り返し考え、
ときには、頭が痛くてふらふらしてしまうくらいに、
悩んでいた時期を過ごしながら、辿り着いた結果です。

というのも、僕自身、
CDというモノが、とても好きで。
学生の頃には、あれこれ選び抜いたCDたちに、
小遣いのほとんどをあてていました。
そして、中学生で、作曲を始めたときから、
CD屋さんに、自分のCDが並ぶことがひとつの夢でした。

今でも、ほんとうにいいと思う音楽は、CDで買っているし、
昔から繰りかえし聴いているCDは、
ジャケットもボロボロだけど、
今も大切に持って、聴き続けている。

そして、今もなお、CDの可能性を大切にして、
活動を続けているアーティストは、すばらしいと思っています。

決して、CDという媒体の価値がなくなったと、
そんなことは、まったく思っていません。

ただ、僕自身が、euphoriaの音楽を通して、
なにを一番伝えたいのか、といった部分を、
多くの固定概念にとらわれず、
ぎりぎりまで、突き詰めていく末に、
ふっと見えてきたものがあったのです。

このことに関しては、いろいろな内容があって、
だいぶ長くなってしまうので、
随時、文章にしていけたら思っています。

*

今回、ここで、書きたかったことがひとつあって。

音源を配信するスタイルを考えるなかで、
デジタル技術、インターネットの急速な発達というものに、
否が応にも、関心を向けざるを得ませんでした。
情報化社会の発展により生まれる、メリット、デメリット。
あんなことや、こんなことも可能になるのかぁ、という、
希望とも恐怖ともとれる、そんな感覚。

そういったことをあれこれ考えている時期に、
僕がよく行く、珈琲屋さんに行ったときのこと。
注文を受けてくれている、スタッフの女の子の対応が、
とてもていねいで、かつ、柔らかくて、
そして、「ありがとうございます」という言葉が、
なんというか、とてもこころに響いたのです。
さまざま疲れが溜まっていたときだから、
何割増かで響いたということもあるかもですが。

それから、その帰り道。
車で細い道を運転しているときに、
対向車が来たので、僕が少し窪んだところで、
待機していたとき、すれ違いざまに、
対向車のおじさんがていねいなお辞儀をしてくれて、
声は聞こえなくても、「ありがとう」が、
すぅーっと伝わって来て。

そういった、「ありがとう」たちによって、
僕は、なにものにもかえがたい、
どっぷりとみたされた気持ちになったのです。


これから、どのように、
さまざまな技術が発展していくか、
そしてそれに伴い、
世の中がどのように動いていくか、
それは、誰も、予想ができないことです。

でも、「こころからのありがとう」を言えるということ、
そして、それを感じて、受け止めることができるという、
何ものにも代えることのできない、その価値は、
人が生きていくうえで、いつまでも輝き続けるのだと、
そんなことを思ったのでした。