2%増しの微笑み

大学のとき、教養科目で社会心理学を受講したのですが、
そのなかで出てきた、ウイリアム・ジェームズという心理学者の、
「楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しいのだ」という言葉。

それを実証する実験が紹介されました。
同内容のマンガを普通の表情で読んだ複数の人と
割り箸を口にくわえたまま、つまり、
強引に笑顔を作らせて、読んだ複数の人とで、
マンガの内容をどの程度面白く感じたかを比べるというもので、
結果は、割り箸をくわえていた人の方が、
より多く、面白く感じていた、という実験結果。

この他にも、「幸せだから歌うのではなく、歌うから幸せになる」、
という言葉もありました。





一週間ほど過ごした、北海道の、のどかな田舎町での時間。
普段の生活では、持つことのできないでいた、
ゆったりとした大きな視点をイメージすることができて、
自分がするべきこと、大切にしていきたいことなどが、
自然とふつふつと浮かび上がってきました。

山や海などの自然に囲まれた環境や、
すれ違う人たちの豊かな表情などがあたえてくれた、
影響が大きいと思うのですが、
それだと、東京での日常に戻ったら、どうなるのかな、と。

そういえば、この田舎町で過ごしている間は、
いつもの自分の表情より、常に、微笑み具合が2割増しくらいだったなぁ、
と感じて、そんなとき、ウイリアム・ジェームズの言葉を思い出したのです。

ということで、東京へ向かう飛行機の中から、
意識的に、ほんの少しの微笑みを大切にしてみた。
本を読みっぱなしでも、飛行機酔いすることなく、
お、なかなかいいかも、と感じているうちに、羽田に到着。

しかし、ここからが大変。
田舎町からのギャップもあり、駅構内の人の多さに戸惑う。
そして、ほとんどの人が、なにかに急いでいる。
眉間に皺をよせた、険しい表情があちらこちらに立ち並ぶ。

ここで、微笑み具合が2割増しなんてとぼけたことを考えていたら、
変な人だと思われるだそうし、迷惑になるなぁ、と感じたのですが、
それでは、なにも変わらない、と思い、
20%ではなくて、ほんの2%増しくらいの、微笑みを意識することに。
きっとこの2%が自分にも周りに対しても、大切なんだ、と言い聞かせながら。





そして家に到着してすぐ、夜から翌朝までのeuphoriaのスタジオリハへ。
旅行の疲れで、ちょっと体が重かったけれど、
一週間ぶりに3人で音を出すと、その気持ちよさで、すぐに元気になる。

新しいアルバム制作に向けた新曲作りの真っ最中。
曲作りの会話で、

「ドラムから入って、次はギターかな、ベースかな?」と僕が言うと、
ドラムスきのした先生が、自信と確信にみちた堂々とした口調で、

「ギース!」

「わわっ、どっちだよ(笑)!」

スタジオが大笑いで包まれる。

結局は、2%の微笑みがどうのこうの、
なんてことではなくて、
ほんとうに大切なことは、
ドラムスきのした先生のような存在なのかも、と思ったのでした。


そんなこんなで、東京での生活がはじまりました。