2008年10月12日 [ everyday ]
自転車屋さんのおじさんと、こころのあたたかみ
ぼくの自転車は、
中学生のときから乗っているので、
10年以上も乗り続けていることになります。
歩きだと、ゆっくりすぎて、それほど景色は変わらなくて、
車だと、速すぎて、景色をじっくり味わうことができない。
そういったわけで、ぼくにとって、自転車という乗り物は、
一番しっくりくる存在なのです。
そんな自転車好きなぼくなので、
通常よりも、多く自転車にお世話になっていて、
それで10年以上、しかも、普通のシティーサイクル(ママチャリ?)で、
というのは、だいぶ長持ちしている方だと思います。
その自転車が、先日、故障してしまい、
このところ、ギコギコ音も大きくなってきていたし、
そろそろ寿命かな、古いものだし修理も高くつくだろう、
最近の自転車は、ずいぶん低価格だから、
新品買った方がいいかな、なんて考えながらも、
近所の、自転車屋さんに状態を見てもらうことに。
この自転車屋さんは、ぼくが生まれたころからある、
職人気質のおじさんが働いている年季の入った小さなお店。
おじさんは真剣な眼差しで自転車のあちこちを眺め、
穏やかながらも頼もしい口調で、ひとこと、
「直してみよう」。
つなぎ服はもちろん、顔回りまで、
油の汚れでいっぱいのおじさんの、
温かい眼差しに、そっと背中を押される感じで、
迷わず、「それでは、おねがいします。」とお伝えする。
そして数日後、故障していた部分以外にも、いろいろ点検してくれて、
おまけに、塗装までサービスしてくれて、
最高に乗り心地のよい自転車に生まれ変わりました。
それまでが相当ガタガタな状態だったということもあるけれど、
こんなにも滑らかな乗り心地、それはまるで、
地上から数ミリ上を進んでいるような感覚。
そのうれしさに誘われて、ふたつ離れた街まで、
長めのサイクリングに出かけたのでした。
*
修理にかかった費用は、結局、
低価格の自転車と同じくらいだったのですが、
愛着のあった自転車にさらに深い愛着が
湧いてきたというよろこびを思うと、
おじさんにおねがいしてよかったなぁ、と思いました。
いつまでも大切にしたいという気持ちになったのです。
近頃、身の回りでは、とにかく安くとか、楽に素早くとか、
そういったことばかりが重視されていて、
職人さんのような存在の影が、
どんどん小さくなってきているようですが、
今でも、こうして実際に、「ほんとうによい仕事」に
出会ったときに広がる、こころのあたたかみを感じると、
大切にするべきものについて、改めて考えてみたくなります。
そして、これから自分が作り出していくものについても、
同じような視点で考えてみたり。