ひとつだけで存在しているものはない

ちょっと前に、江國香織の「雨はコーラがのめない」という、
著者と愛犬とのつながりをモチーフにしたエッセイを読みました。

このエッセイでは、著者と愛犬「雨」が過ごす、
あたたかくて愛情のあるみちたりた時間が描かれています。
一緒に音楽を聴いたり、散歩したり、遊んだりする中での、
そのひとつひとつの描写には、あたたかみが感じられて、素敵です。

このエッセイを読んでから、
街ですれ違う犬の散歩の光景の見方が変わってきました。


外を歩いていて、犬の散歩をしている人に出会うと、
今までは、「かわいい犬だな」、「愛嬌ある犬だな」、という具合に、
犬ばかりに気をとられていたけれど、
犬の仕草からだんだんと視野を広げて、
飼い主さんと愛犬とのつながりを想像するようになりました。

犬がしっぽをふりながら楽しそうに歩くのも、ふてぶてしい仕草をするのも、
飼い主さんがしあわせそうなのも、イライラしているのも、
そこには、無意識だとしても、お互いのつながりがきっと存在している。


考えてみれば、僕たちの身の回りにあるものたちも、
そのものひとつだけで存在しているものはないわけで、
そんな「もの」と「もの」とのつながりあいに、
もっと意識的に関心を持つことができたらと思います。
そうしたら、毎日がより豊かになっていくのではないかな。
そして、世間で絶え間なく起きている、あまりに残酷な出来事も、
だんだんと減らしていくことができるのでは、と思います。